ブランドサイトをリニューアルしました
ほぼ文章だけのティザーサイトとしてスタートした「STRATA」ですが、この度ブランドサイトをリニューアルしました。
これまでSNSで公開してきた写真を中心に「STRATA 7075Ti」の重量や素材など、少しずつ情報を追加しています。

このブログを以前から読んでくれている人は、BICYCLE SECURITY LABを始めた経緯や、STRATAの開発を始めたことについては知っている人も多いと思うので、この記事ではブランドサイトで書きにくい開発秘話について書けたらと思っています。
まずは、かなり長い時間を費やした「材料選び」についてです。
開発秘話「材料の選定について」
強さと軽さを、どう両立するか
STRATAの開発で、最初からずっと考えてきたことがあります。
強さと、持ち運びやすさをどう両立するか。
強ければいいわけでもない。
軽ければいいわけでもない。
自転車と一緒に持ち運ぶ道具だからこそ、その間にあるバランスをどうつくるか。
これが開発の大きなテーマでした。
最初に考えたのは、材料を変える前に、形状の工夫で軽くできないかということでした。
まずは、形を変えてみた
「形で強度を出し、材料を減らせないか」
最初に取り組んだのは、構造による軽量化でした。
金属用3Dプリンタにて、内部を蜂の巣状にしたハニカム構造の丸棒を作成してもらったり、L字やT字の金属板をベースにU字形状にしてみたり、複数の金属を貼り合わせた「クラッド材」も試しました。
ところが、実際に作って検証してみると目標重量よりはるかに重い。
あるいは、大型ボルトクリッパーに全然耐えられない。
形状だけで解決するのは、想像以上に難しいことが分かりました。
そこで次に、本格的に素材そのものを見直すことになります。
鉄以外なら、どこまで軽くできるのか
鉄系の合金は、価格も比較的安く、強度もあります。
しかし、一定の強度を確保しようとすると、(密度7.8g/cm³)のため、どうしても重量が増えてしまいます。
そこで、アルミニウム(密度2.7g/cm³)を片っ端から試しました。
2000系、5000系、6000系、7000系など、入手可能な複数の材料を集めて比較しました。
さらにアルミだけではなく、マグネシウム合金(密度1.7g/cm³)、カーボン、スーパー繊維と呼ばれる高強度繊維まで、さまざまな材料を試しました。
材料をひたすら壊している時間の方が長かった気がします。
その中で、最後まで候補として残ったのが、超々ジュラルミンと64チタンでした。
超々ジュラルミンは扱いやすい材料ではなかった
現在、STRATA 7075Tiには、A7075系の超々ジュラルミンを使用しています。
超々ジュラルミンは、アルミ合金の中でも非常に高い強度を持つ材料です。
7075-T6では一般的な構造用鋼材に匹敵する引張強さを持ちながら、密度は鉄のおよそ1/3。航空機をはじめ、高い比強度が求められる分野で使われています。
ただ、開発当初から「これを使おう」と簡単に決まったわけではありません。
まず、欲しいサイズが見つからない。
一般的に多く使われる材料ではないため材料自体が市中に出回っていなかったのです。
国内で入手できず、海外から取り寄せて試したサイズもありました。
そして何より、扱いが難しい。
強度が高い一方で、今回求めた曲げ形状や厚みでは加工条件が厳しく、割れや変形を避けながら精度を出すのが難しい材料でした。
「それは無理よ」と多くの加工工場で門前払い状態でした、、
しかし、確かに強度は強い、、しかも軽い、、
一度は、U字部にも超々ジュラルミンを使おうとしました
実は開発途中では、U字部分に超々ジュラルミンを使おうとしていました。
ところが、常温のままU字に曲げようとすると、途中で破断してしまいます。
そこで、一度熱処理を行って曲げ加工しやすい状態にし、その状態でU字に成形。
その後、再び熱処理を行い必要な強度まで戻すという(T6処理)、かなり手間のかかる方法まで試しました。
協力してくれた企業と試作を重ね、量産に近い精度で加工できるところまで進みました。
「これならいけるかもしれない」というところまで来たのですが、その後、別の解決できない課題が見つかり、最終的にはU字部への採用を断念しました。
かなり遠回りしましたが、この検証が現在の材料構成を決めるうえで大きな経験になったと思います。
A7075-T651を採用
現在、「STRATA 7075Ti」には超々ジュラルミンのA7075-T651を採用しています。
今回、かなり厚みのあるプレートを使用していますが、ここでも困難の連続でした。
レーザー加工だけでは理想とする切断面や寸法精度を得ることができず、ワイヤーカット放電加工やマシニングセンタ加工など色々な方法を検証し、複数の加工方法を組み合わせることにしました。
なかなか理想の表面にならず、苦戦の連続でした。
そして、もう一つ問題がありました
超々ジュラルミンは、そのままでは使えない。
屋外で使う自転車の鍵に採用するなら、表面を保護する処理も必要になります。
一般的には、硬質アルマイトなどの表面処理がありますが、ここで思わぬ問題が出ました。
色です。
硬質アルマイトを施すと、厚みが増すほど濃い褐色になります。
性能としては問題ない。
でも、STRATAとして考えると、「見た目が……」という問題、、。
強ければ外観はどうでもいい、という製品にはしたくありません。
そこで表面処理についても、かなり探しました。
そんな中、昨年とある企業が持つ特殊なアルマイト加工であれば印象を大きく変えずに、屋外使用を想定した表面処理ができることが分かりました。
そこでようやく、現在の仕様へ進むことができました。
64チタンは、高すぎて一度候補から外したのです
そして、もう一つの材料が64チタン(Ti-6Al-4V)です。
航空宇宙分野から医療まで幅広い業界で使用されています。
密度は鉄のおよそ56%でありながら、高い強度を持ち、比強度に優れる材料です。
ただし、開発当初は候補から外していました。理由は単純です。高すぎる。。。
素材だけでもかなり高価で、「この材料費だけで普通に高級な自転車ロックが買えるじゃん、、と」
量産品として考えれば避けるべき材料でしょう。
それでも、さまざまな素材や構造を試した結果、この重量と強さを両立するには、この材料が必要だという結論になりました。
しかし、相談した多くの加工会社からは「このサイズの64チタンは難しい」と言われました。
ですよね、、
どの選択肢を選んでも、完成までの道のりは長く厳しかったのです。
なお、64チタン、超々ジュラルミンともに、国内大手メーカーが製造した、検査証明書付きの材料を使用しています。
一つの材料ですべてを解決しない
開発中には、「全部を超々ジュラルミンで作れないか」、「全部を64チタンで作れないか」
という構成も考えました。
しかし、実際に切断検証していくと、ひとつの材料ですべてを解決するより、必要な場所に、必要な材料を使う方が、強さと重量のバランスを取りやすいことが分かりました。
もちろん、「64チタンと7075を使ったプレミアムな鍵を作ろう」と考えていたわけではありません。
いろいろな形を作り、いろいろな材料を集め、切って壊して失敗して最後まで残ったものを組み合わせた結果です。
「STRATA」は、私たちだけで作った製品ではありません。
多くの材料メーカー、加工会社、そしてその道のプロ・職人さんたち。
何度ミーティングを重ねたか分からなくなるほどでした。
多くの専門企業や技術者の力を借りながら、試作と検証を重ね、現在の材料構成と製造方法にたどり着きました
次の記事は620gの重量について書けたらと思います。
Makuakeでの公開まで、少しずつ紹介していければと思います。
STRATAのブランドサイトも更新しています。
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