Bicycle Security Lab

自転車の鍵の格付サイトです。鍵のレビューや切断実験、鍵の研究を行っています

ABUS(アブス) Bordo 6000を格付してみた

ABUS(アブス) Bordo 6000 ブラック 長さ90cm

LENGTH:900mm
THICKNESS:5mmブレード
LEVEL SYSTEM:LEVEL10
WEIGHT:1,220g(900mm)

ABUS BORDO 6000

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「レビュー」

多関節ロック(プレートロック)の代名詞ともいえる定番の商品「ABUS Bordo 6000」になります。

ABUSではBORDOシリーズのバリエーションも豊富で、もっと頑丈な鍵や軽い鍵など色々ありますが、その中でも重さと強度のバランスが一番取れているのではと思われるため、購入を検討しているひとも多いのではないでしょうか。

私が個人的に購入したときの購入経緯などは、過去にもう一つのブログで書いているので、そちらも見てみてください。

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昨年購入してから約半年間使用しました。さすがにかなり汚れています。グレー色になっているゴムのようなプラスチックのカバーが特に汚れが目立ちます。

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 鍵はスペアと併せて2つ用意されています。「ABUS6500」などで使われているX Plusシリンダーではなく、普通の鍵が付いています。X Plusシリンダーが付いている「Bordo Centium 6010」もありますが価格が2万円近くします。

ディンプルでもないのでピッキング性能は少し劣るかもしれません。

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ロックの仕方はプレートを本体に差し込んで鍵を回すというオーソドックスなタイプです。一回転させるので多少めんどくささはあります。

プレート部分もしっかりと固定されていてプレート同士の隙間もほとんどありません。プレート同士の滑りもよく引っかかりなどもないためとても使いやすいです。

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鍵の内径もメジャーで測ってみました。前回計測したサイズと同じですね。このぐらいのサイズがあれば地球ロックでも困ることはあまりないと思います。

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実用に近い、六角に広げたときの広さも念のため計測しておきます。

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手元に今後実験予定の「ROCKBROS(ロックブロス)」の多関節があったので、並べてサイズ感を比較してみました。価格帯が違うのであれですが、やはりしっかり感は「ABUS Bordo 6000」のほうがあります。

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実際に自転車に付けてみました。思ったより広々としているのが分かります。

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広すぎて逆に怖くなるほどですね。次の「実験」で出てくる動画を見ると、このゆるゆる感の怖さを感じてもらえると思います。

「実験」

多関節ロックの弱いところは関節部分のみです。この関節部分を切断していたりする動画がYouTubeなど多数あります。実際本当に切断可能なのか、どの程度まで耐えられるのかを少し詳しめにレビューしていきたいと思います。

上記動画で使われている青色のボルトクリッパーのタイトルに表記されている30とは、30インチのことなので、750mmのボルトクリッパーで間違いないと思います。

前回購入した実験用のボルトクリッパーと同じなので同じような結果になるのではと予想しています。

300mm程度のボルトクリッパーではまったく刃がたたず。

これは想定内なので。

さっそく750mmの大型ボルトクリッパーで実験を開始します。

 自転車に付けた状態で切断に取りかかります。まずは定番のプレート部分をガッツリ挟み込み、ボルトクリッパーを縦にして片方を床に置き、体重をかけていきます。

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汚れの中にあるくぼみが跡形なのですが、ちょっと切ない感じですね。まったく切れる気配がありません。プレート自体は5mmと細いので刃が重なり合う寸前まで閉じるのですが、そこから先には進めませんでした。

でも、これも想定内。

関節部分を攻撃します!

自転車に付けたままで実験を継続します。関節の角度が広いままでボルトクリッパーの刃を入れていきます。ん、、すべる。

750mmのボルトクリッパーを最大限に広げたサイズとABUS6000のプレートサイズがほぼ同じ、、周りのプラスチックのカバーが邪魔で挟みこめません、、カバー固い、、時間が5分経過、、

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今現在、動画よりも少し広めの角度で切断実験を行っていますが、無傷に近いです、、

埒が明かないので、実験方法を変更します。

刃がギリギリ入らないということで、ボルトクリッパーを鍵に押しつけることで刃を中に入れていきます。自転車のフレームに鍵を押しつけたくなかったので、板を間にいれ、自転車を壁側に移動します。

するとどうでしょう。プラスチックのカバーがみごとに破れ、本体のプレートが向きだしになってきました。

イケる!と思いいっきに切断に取りかかりますが、関節部分の角度が広いため、カバーを外してもまだ刃が関節の中心部を捉えられません。このあたりで10分経過、、

現在、こんな感じです。ぐちゃぐちゃです。ちなみに上の写真のボルトクリッパーの刃の広さが、一番広げた状態です。

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裏側も同じく、、

動画と同じ条件にして実験します

 ここからは、動画と同じようにゆるゆるの地球ロックをしたと想定して実験を行います。角度を少し狭めます。時間計測もゼロからスタートします。

さすが2回目になると作業も早くコツを掴んでいます。まずはグリグリとプラスチックのカバーをかき分け関節部分に刃を挟んでいきます。リンクの中心部を刃が捉えると切断できるはずなので、じっくり入れていきます。

時間にして3分経過、、さきほどよりもどんどん刃が入っていきます。途中で何回か刃を入れ直して入念に実験を行います。

5分が経過したぐらいには、あ、イケるという感じになってきました。

動画と同じようにレディゴーします。

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バスっと切断できました。ここまでくると軽く握るだけで切断できました。

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プレート同士を外してみました。約8分。動画よりかなり時間がかかってしまいましたが同じような結果になってしまいました。

 

間接の細部を研究します

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やはり間接部分はこのピンのみで留まっているようです。

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ピンのサイズは約7mmなので つぐのブログで確かめたサイズと一致します。

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プラスチックのカバーを除いてプレートをむき出しにしてみました。カバーは柔らかそうに見えるのですが手では剥がせず、ニッパーを使ってちぎっていきました。

金属プレートの幅は20.4mm、厚みは5.3mmほどでした。

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重ねてみました。隙間がぴったりと無くなるようにカバー分だけ関節部分が飛び出しているようです。凸の直径は約15mmあり、その周りに2.5mmほど余っています。ちゃんと考えられて作られています。

ボルトクリッパー300mmで切断できなかった理由

手元にあるボルトクリッパー300mmの製品限定の理由かもしれませんが、

実は、この凸の隙間が300mmのボルトクリッパーが挟めなかった理由の一つになっていると思われます。どこまで計算されて付けられたのかわかりませんが、、

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これがピンで繋がっている状態(カバーのみ除去)のものです。

ボルトクリッパーの刃は肉厚なので、300mm程度の刃先だと先に縁に当たって刃が掛からないという現象になっていたようです。

さらに、凸があるためピンを直接攻撃できません。そのためピンを切断するというよりは、両サイドから圧をかけてピンに触れずにちぎらなくてはいけません。しかし、刃の長さも足りず力が加わらなかったのだと思います。

ピンだけなら刃の肉厚がないニッパー、金ノコでいける?

軽くそんな気がしてピアノ線も切られるニッパーを取り出してみましたが、ニッパーの刃は包丁みたいに垂直ではなため、縁と凸が邪魔して刃が届きませんでした。。

では、刃が垂直な金属切断用ノコギリなら簡単ではと思い、刃を入れてみました。金ノコの刃は0.7mmあるのですが、プレートの隙間が0.7mmもあるわけなく凸を切るはめになり、5分ほどキコキコとチャレンジしましたが手動では削れず諦めました。

AA ゴールド「カフェぐらいならいけるかも」

内心 、もう一段上の「AAAプラチナ」までいけるかも、いってほしいと思っていましたが、思いのほか残念な結果になってしまいました。

条件を変更して二度実験を行ったとはいえ、大型ボルトクリッパーの壁を越えることができませんでした。

格付としては、AA ゴールドになります。

 もちろん、この鍵がNGということではありません。

同じゴールドの格付けの中では他のU字ロックよりも難易度が圧倒的に高かったため、一番上位にランキングされます。

実験結果からも分かるようにABUS6000をボルトクリッパーで切断しようと思うと、刃のサイズ的に750mmのサイズが必要最低限になります。

つまり、これ以下では切断は難しいと思われます。このサイズを持ち歩くのは業者かプロの窃盗団ぐらいでしょうから、よくいる衝動的な盗難には無敵に近く、地球ロックをゆるゆるにさえしなければ750mmでも切断はかなり不可能に近くなります。

 地方などプロの窃盗団がほぼいないと思われる地域では十分有効だと考えます。

もちろん、1000mmのボルトクリッパーや油圧カッター、サンダー等、さらに上の強敵もいるので決して油断はできません。マンションの駐輪場や長時間放置する際は、もっと強固な鍵を選択する方がいいと思われます。 

おまけ

常用しているABSU6500が手元にあったため、同じ条件下ではどうなるか気になったので少し刃に当ててみました。

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750mmのボルトクリッパーを最大に広げた状態ですが、まったく刃がかかる様子がありません。間接どころかプラスチックのカバーを削れるのか?という感じになりました。

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完全に折りたたんだ状態でも同じですね。

750mmは刃を完全に広げた状態の刃先が約20mm少し。ABUS6500は約33mmの幅があり、つぐのブログのレビューでも間接の周囲に直径25mmのプロテクションがあると思われるので切断はまず難しいと思います。1000mmクラスのボルトクリッパーならもう少し刃が広がるので、実験してみたい気もしますが、、いつの日か、、

 

追記2017.7.29

ABUS多関節シリーズの下位モデルも実験したので良かったらどうぞ。10と7のセキュリティレベルの違いが明らかになりました。